映画

震える舌

震える舌 Prime Video ~ 渡瀬恒彦

夫婦の一人娘が破傷風になる話。あまぷらに入ったので見ました。
こんな良作があったならもっと早くに知りたかった。内容自体は淡々としているし心理描写なんかは小説の方が断然向いてるなって印象なのに暗い画面で淡々と進む話が一歩どころか半歩ずつぐらいのゆるやかな歩みで確実に狂気側へと精神を転がしていくので登場人物の母親父親と一緒に(あるいは後ろに寄り添うように)疲弊しながら追い打ちのようにして常識を塗り替えられていくという体験ができます。おすすめです。

こういう気持ちですっていう説明はほとんどなくて、画面に映る映像がすべてで、もちろんセリフはあるんだけれどそれは今現在の心理状態の説明よりも「極限状態の時にそれでも外部とコミュニケーションをとらねばならない時にどういう顔で取り繕うのか」というようなお手本を延々見せられるような感じです。この部分も本当にすごい。取り繕っている度合いが心理的な余裕のバロメータというか、毎日毎時会うわけではない外部の人間目線でこの物語の当事者を見ると、本編中ではゆるやかな変化を経て疲弊してゆく母親父親が明らからに「変わった」ことがわかるので、こういう視点の切り替えを使いながら見れるのも面白いです。映画というか映像コンテンツならではの見せ方だと思うので(小説だと急な視点変換は私は苦手です)ほんとうにこの映画すごいなと。こんな良作があったならもっと早くに知りたかった。見れてよかったですありがとうございました。とても良作なのでぜひ見てください。